harapeco20200309の日記

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中島 義道 哲学の教科書 書評

哲学の教科書 (講談社学術文庫) | 中島 義道 |本 | 通販 | Amazon

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内容

死や時間や自己について、苦しむほど悩む抜くことこそが哲学であり、それと哲学研究の区別をはかる。またその哲学への招待。

 

以下、注目ポイント

第一章 死を忘れるな!

最大の哲学問題は死である。

死んだ後の世界を考えるのは欺瞞。

相対論に逃げず、事項の普遍性を考え続けることが出来るのが哲学の適性。

第二章 哲学とは何でないか

著者曰く、哲学と思想とは区別すべきものだ。思想とは膨大な信念を受けいれるところからスタートするが、哲学は素朴なテーマに徹底的な懐疑を抱く。

哲学は文学でもない。成人しても子供の心を残している稀有な人々の文章は哲学に近い雰囲気を持つ。「星の王子さま」は大人批判的な臭いがありまったく哲学的でない。宮沢賢治は哲学的である。

哲学は芸術でもない。あることに一所懸命に打ち込み続ける職人を見て、一種の知者のように扱うことがある。しかし、一流の「物」をつくる達人は「色」や「形」は思索し続けたが、「時間」や「自我」についてほぼ思索していない。哲学者はこの宇宙に引っかかっているが、芸術家は「もう一つの宇宙」に夢中である。

哲学は人生論でもない。やはり人生論も前提を設ける。また、「よい」という概念を普通に用いる。これは哲学的でない。

自殺は思考停止であり、それ自体が哲学の否定。

哲学は宗教ではない。宗教は生きるという労苦からの救済である。

哲学は科学ではない。科学は客観的な知識を得ることを目的とするが、哲学はやはりその成り立ち、有効性、可能性を問う。

科学は個物の個物性に興味を持たない。

著者曰く良い哲学とは鮮明に精確に魅力的に語りだしているか。哲学は普遍性があるように語るだけでなく、個人としての相手の実感に訴えかけなければならない。

第三章 哲学の問いはいかなるものか

プラトンは哲学の開始を「驚き」とした。

過去は存在しない。

意志とは「思うこと」ではない。

「私」は存在するか。

他人に干渉しない、他人を異質なものとして尊重する態度が必要で、それは他人を理解することと関係する。

存在論としての「ある」は複雑だが、例えば「君の論文にはごまかしがある」といった「ある」の微妙なニュアンスを把握できるのは不思議である。

第四章 哲学は役に立つか

哲学は社会で役に立つこと以外の価値を教えてくれる。人間社会のみみっちい価値観の外に出る道を教えてくれる。

「自分自身」になること。生そのものの価値を教えてくれる。

第五章 哲学者とはどのような種族か

哲学者とは自分がここでこうしていることが「何か変だ」と感じている人のこと。

哲学研究に時間を取られている。

9割の論文や著作が他の哲学者の解釈。

第六章 なぜ西洋哲学を学ぶのか

日本人はドイツ語などで、細かなニュアンスの違いや厳密な論理を伝えるのに苦労している。

別の哲学を持ち出しても、文化相対論にしかならず哲学の理念と対立する。

近代化において技術とともに西洋哲学を輸入した。

第七章 なぜ哲学書は難しいのか

「私」や「混沌」といった日常語は手垢にまみれていて、かえって誤解を生むので難しい単語を使うことになる。

 全体をもって一部が理解できる。一度分からないところをわきに置いて読み進める必要がある。

感想

書いている哲学的事項をそのまま要約して内容とするのは、この本の主旨に反していると感じたが、自分の琴線に触れたところや自分なりの解釈かくというのも難しかった。また別の哲学入門書を読んでからこの本を読み返すべきか。

関連する詩や文章が随所にさしこまれていたが、どうもピンとこないものが多かったので、これらの純粋な文学にも触れていきたいと思った。

著者が学生時代の方が思索していたと語っていて、自分も昔の方がそのような「考えてもどうしようもないこと」と言われることを考えていたなと思い出した。

哲学と思想の違いの著者の解釈は非常に興味深く感銘を受けた。

著者は数学的な訓練を受けるべきだとアキレスと亀の無限論のくだりで感じた。